2013年5月31日金曜日

国連人権理事会のアナンド・グローバー勧告と日本政府の回答

先日、国連人権理事会の特別報告者であるアナンド・グローバー氏による報告・勧告が出され、それに対する日本政府の回答が示された。

グローバー氏は、昨年11月に来日し、原発事故後の日本の人権状況について調査し、その際にはごぼうさんもインタビューに応じている。


グローバー氏の勧告の中で、原発労働者に関する記述は以下である。

「77. 原発事故の影響を受けた人々に対する健康調査について、特別報告者は日本政府に対し以下の勧告を実施するよう求める。

(k)原発労働者に対し、健康影響調査を実施し、必要な治療を行うこと」


…グローバー勧告はかなりざっくりしているのだが、これに対して日本政府は、

「原発労働者など被曝を伴う労働に常時従事する者については、関連規則によって6ヶ月ごとに健康診断を行うことを使用者に義務づけている。健康診断の結果に基づき、必要な治療が提供される。
 加えて、福島第一原子力発電所において被曝放射線量の限度が250ミリシーベルトに引き上げられた緊急作業期間(2011年3月14日から2011年12月16日)に緊急作業に従事した労働者に対しては、政府指針に基づいて追加的検査が行われる。厚生労働省はこれら労働者の健康診断の結果を収集、データベースに記録している。追加的検査の結果に基づき、必要な治療が行われる。」との回答を示している。

(以上、原文はhttp://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/RegularSession/Session23/A.HRC.23.41.Add.5_Rev.1_ENG.pdf)


2013年5月10日金曜日

原子力企業は下請け作業員に向き合え


*フリーター労組ブログより転載します*


偽装請負とは何か。

雇用関係を結ばない労働者を指揮命令下に置いて働かせることを「偽装請負」という。
これは企業にとってすごくおいしい。
人が不要になったら下請け企業との契約を切ればいい。それで使用している作業員への雇用責任を果たさずに済む。
作業員の安全衛生管理の責任も下請けに丸投げできる。
だから「偽装請負」は、職業安定法44条で禁止されている。違反すれば1年以下の懲役または百万円以下の罰金だ。

原子力企業は、下請け企業の従業員であるごぼうさんに、具体的な業務指示を出して働かせてきた。
なのに原子力企業はごぼうさんとの雇用関係を認めず、いっさいの責任を取ろうとしない。
フリーター全般労働組合はごぼうさんの雇用・労働問題を議題にした団体交渉を原子力企業に求めてきたが、昨年来の申入れはいっさい拒否され続けている。

作業を過小評価するな

原子力企業は作業員の業務を徹底的に過小評価している。

「発電所内で作業する者らに対する、いわば後方支援や補助のための簡便な作業」


これが元請け企業側の言う収束作業員の業務である。発電所内で作業し、事故以前の放射線管理員が2年間で被ばくする線量を1カ月で浴びる仕事。公務員であれば人事院勧告に従い危険手当の支給対象となる作業である。これを「後方支援や補助のための簡便な作業」と企業側は描き出し、作業を徹底的に過小評価している。

【扉開閉操作】
「入口内扉、外扉に1名ずつが配備され、それらが同時に解放しないように、作業員が手で合図を送り、内、外扉の開閉をするというもの」


実際はそんな単純なものじゃあない。
放射性物質が流入しないように細心の注意を払いながら、かつ元請け社員の判断でひんぱんに変更になる作業方法に合わせなければならない。そのため、作業員は複雑な対応を迫られる。

たとえば多い時で週に5、6組の外部視察が入る第三工区を担当する際の扉開閉操作はとても複雑だ。

例をあげよう。
ある作業員が第三工区の内ドア管理をしていた時に、VIP(調査に訪れる人々や東京電力の社員を現場の作業員はこう呼んでいた)が来訪した。そのときの対応が、元請けから「不十分である」とみなされたことがあった。外ドアの管理していた下請け企業の作業員が、そのVIPの対応をしなかったのだ。

なぜしなかったのか。
単純な話だ。その人は自分の仕事である外ドアの管理をしていたからである。

ところがこれを見た元請け企業の統括責任者は激昂した。

「なにあいつ、ぼーっとつっ立ってんだよ、これだから×社は常識知らねえな」

その作業員は「外ドアの管理がありますから」と答えた。

すると統括責任者は

「ドアの鍵を閉めてVIP対応すりゃいいだろ」

と怒鳴りつけ、その場で仕事のやり方を変えてしまったのである。

作業員は自分の会社の従業員のみならず、第三工区の扉開閉操作に携わる他社の作業員にもその旨を伝え、それ以降は、外ドアの管理をしている作業員も、VIPへの対応をすることになった。

また、専用の装備をつけないVIPに対し、他の作業員が注意を促したことがあった。
ところが全面マスクをしているVIPには音が聞こえない。そのため、その作業員はVIPの身体に触れて注意を促した。それを見た元請け企業の統括責任者は内ドアの開閉をしていた作業員を呼びつけ、

「おいおい、あいつ何ひっぱんてんだよ」

と吐き捨てるように言った。

作業員が「あの人が間違った装備だったので呼び止めたんじゃないですか」と答えると、統括責任者は

「また×社かよ、なってねえな。あいつ誰!」

とわざとらしく聞こえるように舌打ちし、×社の社員を呼び止め連帯責任をちらつかせ詰問したのである。

このため作業員は以降、VIPには触れないように、他の作業員に周知することになった。

さらに、到着したVIPごとに順次、装備をチェックして外部屋に送り出すことになっていたそれまでのやり方が、元請け統括責任者の指示によりとつぜん変更された。VIPを順次送り出すことをやめ、VIPが全員そろうまで内部屋で待機させ、そろってから外部屋に送り出すようになったのである。

一方、直勤務シフトの際には、作業員は第一工区、第二工区の扉開閉操作に従事した。この仕事を元請け企業は、「ドアごとに1人の作業員が配置されている」と説明しているが、実態はまったく違う。

例えば第二工区には、内、中、外と3つの扉があり、時間帯によっては扉開閉操作に2名の作業員しか配置されない。特に、東京電力がサーベイ時間の短縮を求めるようになってからは、内ドアの開閉作業は、サーベイ業務と兼ねることになった。

また、外ドアもしくは中ドアの担当者は、ゴミ捨ての業務にも従事していた。内ドアの担当者がサーベイ業務に従事しているときに、中ドアの担当者は、内、中、外の3つの扉を管理しなければならなかった。

第一工区の場合、時間帯によっては内、外2つのドアを一人で管理しなければならない。元請けの社員が同じ工区にいる時には、これらの業務をいつ、どのようにこなすのかは、元請の社員の指示に従っていた。

このように、会社側の説明とは異なり、扉開閉操作は、時間帯、状況に応じて業務内容がかわる複雑な作業であり、元請け企業の社員の指示に従って行われるものであった。

【脱衣補助】
「発電所内作業員がビニール製保護衣を脱ぐ場合に、背中の部分にハサミを入れて脱ぎやすくするもの」


これもずいぶんと単純化している。

「ビニール製保護衣」とあるが、カッパとアノラック(汚染水処理や建屋内などの高汚染区域での作業に従事する作業員が、タイベックの上に着用する保護衣であり、極めて汚染量が高いもの)のことである。
ハサミを入れるのも背中だけではない。背中、フード部、ならびに両脚の外側部分の3か所であり、作業は「脱ぎやすくする」のみならず、汚染を広げないよう慎重に脱がし、回収し、廃棄することまで含む。また、タイベックの両袖、両足首、およびフード部分にされた目留テープをはがす作業も含まれる。

【装備回収】
「発電所内作業員が脱いだ靴下や靴カバー、タイベック等の装備品を回収して、廃棄すること」


回収する装備はこれだけではない。元請け企業が列挙するものに加え、軍手、綿手袋、ゴム手袋がある。また、作業で生じた様々なゴミの回収、廃棄も行なっていた。これらは、いずれも放射性物質に汚染されたものである。

【スクリーニングサーベイ】
「発電所内の現場から戻ってきた作業員の身体及び携行品に放射性物質が付着していないかを、二人一組になって、専用の器具(GM管)で測定するというもの」


ちょっと待ってほしい。
実際は、二人一組の作業ではない。
時間帯によっては一人しか配置されず、前述したように、ドア開閉操作を担当する者が兼務して従事しなければならなかった業務である。

作業員は従事していたのに、元請け企業が認めていない業務もある。「連続ダストフィルターの管理」「元請け企業社用車の運転」「精密機械の搬入」などだ。それが例外的ではなく、日常的に行われていたことは、下請け企業が組合との団体交渉で認めていることだ。

【精密機械の搬入】「なし」


これは事実と異なる

作業員は「精密機器」というラベルが貼ってある、黒い合成樹脂性のトランク。奥行20センチ、幅70~80センチ、高さ60センチくらいの大きさ。黄色で文字が書いてあるものを、直勤務、日勤時の9時~10時の搬入・搬出時、月に一度くらいの頻度で、下着の搬入・搬出時に行っている。あれが「精密機械」でないのなら、中には何が入っていたというのか。

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【元請け企業社用車の運転】「交代勤務者の移動の便宜のため」


これだとあたかも元請け企業が下請け作業員の便宜を図って車を出していたかのようだ。では、なぜ元請け企業社員は何もいわずにいきなり助手席に座るのか。元請けと下請けの社員が同じチームに入れられたら、下請けは元請けに便宜を図って運転するしかない。

だいたい直勤務の先発シフトの帰りでは、フクイチに元請け企業社員が残らなければならないから、元請け企業の社員は車をジェイヴィレッジに戻すことができない。じゃあだれが元請け企業社用車をジェイヴィレッジの所定の場所に戻していたのか。下請け会社の作業員じゃないか。

元請け企業は車両の運転を作業員が「あることもあったという程度のもの」と過少に評価している。でも事実は違う。車は「元請け企業社員が運転することもあったという程度のこと」であって、下請け作業員の仕事とされていたのである。

元請け企業の指揮命令

元請け企業は以上のような作業員の業務について、
指示は行なっていない、行ったとしても緊急時に例外的に行ったに過ぎない、と主張している。


だが、作業員は、出入管理業務全体、とりわけ第二工区、第三工区については元請け企業従業員である統括責任者からの、第一工区及び資材搬入・搬出については別の同社従業員からの指示・監督を受けて働いていた。
直勤務の時に作業員が所属していた班の担当は元請け企業の社員であったし、日勤の場合は第三工区に元請け企業の社員らが配属されて、作業員をはじめとする下請け企業の従業員に指示を与えていた。
出入り管理業務はシフト制で行われており、仕事の現場に下請会社の責任者は基本的に不在である。だから、下請け企業の従業員は、その場にいる元請け企業社員の指示・命令を受けることになっていた。
元請け企業社は、作業員に日々、恒常的に、逐一、直接指示・監督していた。これはミーティングの実施によっても明らかである。作業員は直勤務の際は、毎日ジェイヴィレッジ内と免震重要棟併設プレハブ内の2回、9月からは日勤の際にも、免震重要棟併設プレハブ内の1回、持ち場に着く前にかならず元請け企業社社員の指示を確認するためのミーティングに参加していた。
作業員が参加したジェイヴィレッジ内でのミーティングは、班のミーティングであった。そこには同じ班に属する下請け企業従業員に加えて元請け企業の社員が参加し、一日の流れを確認して、作業持ち場と先発・後発の確認、運転担当決めなどをしていた。
免震重要棟併設プレハブ内でのミーティングは、「××ノート」と作業員の間では呼ばれていた元請け企業からの指示・連絡ノートをもとにして行われる。そこには統括責任者ら元請け企業の現場責任者が出席していた。作業員をはじめとする下請け企業従業員は、そこで当日の作業の引き継ぎ、変更事項や注意、VIP来訪の有無や対応の仕方などを元請け企業から指示されていた。
元請け企業は作業員の業務を包括的かつ具体的に管理する権限を持ちつつ、作業員に指示・命令をしていた。
監督する立場の元請け企業社員がいる場合には、元請け企業社員の許可を得てからでなければ休憩時間に入ることもなかった。VIP用の黄色の靴をサイズごとに必要数だけ用意する業務があるのだが、不足したサイズの靴をどう用意すればいいのかについて元請け企業社員の指示を仰いだこともある。
だいたい、その日の作業は「××ノート」を確認しなければわからない。
ところがこれらの実態を無視して、元請け企業は危険性を伴う緊急の事態にのみ作業を指示しただけであると主張している。だが、そんな言い訳は成り立たない。元請け企業が「緊急の事態」と言っていることはフクイチでは日々繰り返されていることだ。元請け企業はタイベック着脱場所の床が水分で濡れている状態を緊急事態の例に挙げているが、現場ではそれは日常である。
放射性物質汚染やその拡大の危険性が伴う状態が日常的であったのに対して、当該現場で作業員が×社の班長と同じ持ち場で作業することは通常はなかった。
また、班の中で先発・後発に分かれて作業をするので、仮に×社の班長が班に所属していても、作業員は班長とかならずしも同じ持ち場を担当する訳ではない。したがって、床の水のふき取りなどの作業も、元請け企業社員の指示・命令の下に行っていたのである。
作業員が従事していた業務においては、安全確保が必要とされる事態が作業の常態であり、持ち場での下請会社責任者の不在も常態であった。したがって、元請け企業の社員が作業員をはじめとする下請け業者の従業員に対処作業を求め、作業態様につき言及するのも通常のことである。元請け企業は恒常的に、作業員の作業内容や態様を一方的に支配、決定するためになされた業務指示をしていたのである。







だから作業員は作業の進め方について分からないことや確認しなければならないことがあればかならず、元請け企業社員に質問をしていた。
汚染拡大防止や安全配慮の観点からの指示を確認するための質問はもちろん、元請け企業社員に聞くしかない。でもそれだけではなく、具体的な業務の指示そのものが、ミーティングだけでなくその都度、現場で元請け企業社員からなされていたのである。そのため作業の進め方や内容が不明確な場合、その場を監督する元請け企業社員に質問するのが当然のことだった。

これらはもちろん、汚染拡大防止や安全配慮とは無関係の具体的な業務指示の一例に過ぎない。

ミーティングの場に、下請会社の現場責任者が出席しているとは限らない。したがって、具体的な作業についての指示は、現場を監督する元請け企業の社員から受けることになっていた。元請け企業の関わりは補足的なものではないのである。
2012年4月以降、日勤勤務となってからも、第二工区の元請け企業社員らの指示を受け、わからないことがあれば元請け企業社員に質問をしながら作業に従事していた。したがって、元請け企業社作業員の作業内容を一方的に決定する立場にあり、そうしていたのだから、作業員に業務指示をしていたのである。


たとえば直勤務において作業員が所属していたD班は、2012年3月までは、元請け企業社員2名、×社と他の下請け会社の作業員7名で構成され、指揮命令は、元請け企業の2名の社員のいずれかからなされていた。


厚生労働省の「偽装請負の基準」に照らして

厚生労働省は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示(37号告示)」において、請負事業の条件を具体的に示している。「37号告示に関する疑義応答集(厚生労働省)」は、以下のような事例については偽装請負にあたるとしている。

「発注者が直接、請負労働者に作業工程の変更を指示したり、欠陥商品の再製作を指示したりした場合(2.発注者からの注文)」


これは作業員が従事していた「VIP対応」や「下着回収」がよい例だ。
なお厚生労働省は同基準において

「管理責任者が休暇等で不在にすることが有る場合には、代理の者を選任しておき、管理責任者の代わりに権限を行使できるようにしておけば特に問題はありません」


としている。

だが、同時に

「ただし、管理責任者が作業者を兼任しているために、当該作業の都合で事実上は請負労働者の管理等が出来ないのであれば、管理責任者とは言えず、偽装請負と判断される(4.管理責任者の兼任)」


と明確に述べている。

この件では、まさに下請会社の管理責任者は作業者を兼任している。そのため事実上作業員の管理等ができない。

「発注者と請負事業者の作業内容に連続性がある場合であって、それぞれの作業スペースが物理的に区分されていないことや、それぞれの労働者が混在していることが原因で、発注者が請負労働者に対し、業務の遂行方法に必然的に直接指示を行ってしまう場合は、偽装請負と判断される(5.発注者の労働者と請負労働者の混在)」


これはまさにそうである。作業員が所属していた班は、発注者である元請け企業の社員と、作業員を含む下請会社の作業員が同じ場所で作業することを前提に構成されていた。そのような班構成で作業をするのだから、作業現場ではとうぜん発注者である元請け企業の指揮命令下で働かざるを得ない。

「工場の中間ラインのひとつを請け負っている場合で、一定期間において処理すべき業務の内容や量が予め決まっておらず、他の中間ラインの影響によって請負事業主が作業する中間ラインの作業開始時間と、終了時間が実質的に定まってしまう場合など、請負事業主が自ら業務の遂行に関する指示その他の管理を行っているとはみなせないときは、偽装請負と判断される(6.中間ラインで作業する場合の取扱)」

これも作業員の件に当てはまる。

たとえばサーベイ作業は他の作業との関係でしか作業時間を決められない。他の作業の進行によってサーベイ作業の進行は決まってしまうのである。だから下請け企業が自らの業務の遂行に関する指示その他の管理を行なえるわけではない。

「発注者が請負業務の作業工程に関して、仕事の順序・方法などの指示を行ったり、請負労働者の配置、請負労働者一人ひとりへの仕事の割付等を決定したりすることは、請負事業主が自ら業務の遂行に関する指示その他の管理を行っていないので、偽装請負と判断される」「こうした指示は口頭に限らず、発注者が作業の内容、順序、方法等に関して文書等で詳細に示し、そのとおりに請負事業主が作業を行っている場合も、発注者による指示その他の管理を行わせていると判断され、偽装請負と判断される(7.作業工程の指示)」


まさにこれが作業員の経験してた日常である。
これまでも述べてきたように、VIP対応など個々の作業のやり方やその変更は統括責任者から指示されていた。またマスク交換のやり方についていきなり統括責任者が「立ってろ!」と作業員を罵倒したこともあった。日常的に作業者証はかならず元請け企業が管理し、「言われる前に動け」との指示も元請け企業社員からされていたのである。

「製品や作業の完成を目的として業務を受発注しているのではなく、業務を処理するために費やす労働力(労働者の人数)に関して受発注を行い、投入した労働力の単価を基に請負料金を精算している場合は、発注者に対して単なる労働力の提供を行われているにすぎず、その場合には偽装請負と判断される(8.発注量が変動する場合の取扱)」


これも問題だ。元請け企業は「明日の人数を減らして」と指示を出し、それを受けて作業員が勤務を減らしたことがある。成果物の納入ではなく、労働力の提供を求められていたのが実態だ。

「請負労働者に対して発注者が直接作業服の指示を行ったり、請負事業主を通じた関与を行ったりすることは、請負事業主が自己の労働者の服務上の規律に関する指示その他の管理を自ら行っていないこととなり、偽装請負と判断される(9.請負労働者の作業服)」


元請け企業からの作業服の指示もある。
放射線防護衣である「タイベック」にはいくつかの種類があるのだが、それを高価な「デュポン」から安価な「3М」に変更するように指示したのは元請け企業の統括責任者だ。それ以降、元請け企業傘下の下請けのタイベックは「3M」に変更されてしまった。

「請負業務の内容等については、日常的に軽微な変更が発生することも予想されますが、その場合に直接発注者から請負労働者に対して、変更指示をすることは偽装請負にあたる(11.請負業務の内容が変更した場合の技術指導)」


下着回収、サーベイ対応、VIP対応、GM管の使い方、待機の扱いの変更などなど、どれもこれも元請け企業からの指示だ。したがって会社と下請会社間の請負契約は単なる形式であって、その実態は偽装請負として評価されるべきものである。